■天皇賞(春)所感
出走前から多くのファンの期待は、もはや、海外遠征を控えたディープインパクトの勝ち方だけに焦点が注がれてた、と言ってもおかしくないかもしれません。単勝オッズが、1.0に近づけば近づくほど、単純な勝利への期待ではなく、その過程のパフォーマンスへの期待の高さをあらわしているとも考えられます。そして、その期待を十分満足させるパフォーマンスを見せてくれた、そんな印象です。
■ロングスパート
3角手前ほぼ最後方から進出〜4角直線入口手前で先頭〜そのまま押し切る。かなり、後から仕掛けたリンカーンの脚がとまった後も、ディープインパクトは、追えばまだ伸びるそんな余裕さえ感じるゴール前でした。2000m以上走った後で、少なくとも、1000mに渡って11秒前半のラップを刻み続けたことになるかと思います。とりわけ、ディープインパクトがほぼ先頭に立ってからの4ハロンは、44.8秒。芝の状態が良かっただろう事を考慮しても、1800m外回りで余程後半に偏ったレースで45秒台でしょうから、通常、まず考えられないタイムだと思います。
有馬記念で敗れたことを踏まえてか、はたまた海外遠征を意識してか、もちろん相手関係を考慮してのことだとも思いますが、4歳になってから、豊騎手は、加速し始める場所を早めているような気がします。直線入口で先頭、そして押し切るという横綱相撲。ディープインパクトの場合は、最後方が進撃開始の定位置ですから、まさしく別次元のロングスパートが求められることになりますが、ここまで、鞍上の期待以上の走りを見せているのだろうと思います。
そういう意味では、確実に3歳時よりも強い走りしていると言えるのではないでしょうか。少なくとも追い込みに近い脚質から、別次元のロングスパートを手中におさめた所謂マクリへの転換が成功している、という印象です。前半に通常なら致命的とも考えられるほど掛かったにも関わらず、最後まで脚がとまらなかった菊花賞は伏線だったかもしれません。
■ばてない?
さて、ディープインパクトは、何故、上記のような超ロングスパートが可能なのでしょうか。血統?全兄のブラックタイドは、スプリングSでは展開に恵まれた印象もありましたし、長く脚を使うというイメージでもありません。勝負根性?並んでから強いというタイプでもありませんし、単独でも走り続けます。強靭な心臓?無論、通常の馬よりは優れていることとは思いますが、ここまで性能が違ってくるでしょうか。
やはり、馬体、筋肉のつき方やフォームなど、フィジカルな部分で語るのが論理的でしょうか。「三冠馬ディープインパクト強さの秘密」などに、詳しいことが書かれているのかもしれませんが、少し華奢に映る馬体も、神秘的な確率でしか達成されない均衡を保つために、決して譲れない1要素なのかもしれません。いずれにしても、瞬発力などが卓越しているのはもちろんですが、別次元という意味では、とにかく、ばてにくいという尺度が挙げられると思います。
■最初の敗北
昨年の有馬記念では、結果的に、先に進出したハーツクライを捉えきれず、初めて他の馬に先着を許しました。当時、個人的には、JCでハーツクライは確実にゼンノロブロイを超え、強い古馬としての印象がありましたので、たとえ3冠馬でも、2kgもらってどっこいどっこいだろう、ぐらいに考えていました。
今、振り返ってみますと、もちろん、先に書いたロングスパートは、京都や東京のような大回りコースでこそ、という見方も出来ますが、仮に、有馬記念でも4角先頭を目指して進出していれば、結果は違っていたかもしれません。当然、ディープインパクト自身もラストの脚色は鈍ったでしょうが、動かざるを得なくなるハーツクライの脚は、それ以上に鈍っただろうと予測されます。
■増えない馬体重
皐月賞まで減り続けた馬体、ダービーで持ち直したものの、どれだけ成長してくるか楽しみだった秋初戦も、同じ馬体重でした。当時、ダービー時点で、完成された馬体だったのだと理解し、同時に、古馬になっての成長力には黄信号という感触を持ったものです。
さて、古馬になって2戦を消化した現在、成長力という意味ではどうなのでしょうか。無論、もはや成長する必要もない位強いとも言えるわけですが・・・。先に書いたように、この2戦では、おそらく3歳時より厳しい課題に応える形で、より強いレースをしていると思います。ただ、それは、成長分ではなく、3歳時にすでに具えていたけど出していなかった性能の範囲内、と考えるのが適当な気がします。
当然単純に増えればいいものでもなく、先に書いたように、この馬にとっては、馬体が増えることが究極の均衡を破ることになるかもしれません。しかし、現在の華奢なディープインパクトでは、今回のような-4kgでのレコードタイムは、それなりに堪えるのではないかなどと、何かと危惧しやすい材料になります。
■海外遠征
もちろん、欧州の馬場とは全く異なるものの、前走の阪神大賞典のように所謂時計のかかる馬場でも、時計がかかるなりに、他の馬とは別次元の上がりだったことは、好材料だと思います。とはいえ、時計がかかればかかるほど、別次元の度合いが薄まるのは事実ですし、馬場は少しでも時計の出る馬場の方が良いと思います。大外をマクッて勝てるほど楽ではない、という意味では、できるだけ頭数が少ない方が良さそうです。というよりも、欧州のペースなら先団につける競馬も十分可能だと思いますし、その方が断然有利ではないでしょうか。
